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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
刹那、お絹は駆け出していた。
「お彩ッ」
その声に、女がつと振り向いた。
満月の光の下ではその妖しいほどの美貌がひときわ際立っている。まるで浜辺に群れ咲くハマナスの花のようにあでやかであった。
空恐ろしいほどの美貌だった。今宵の満月が零す光の雫が凝って人の形を取ったような―、この世のものならぬ美しさだ。
お絹の意識がたったひと刹那で過去へと引き戻されてゆく。
一人の男の貌が鮮やかに脳裡に蘇った。
吉之助もまた美しい男であった。初めて月の光の下で吉之助を見た時、お絹はやはり凍れる月のように綺麗な男だと思ったものだ。美貌で知られた吉之助の姉だけに、お縞もまた壮絶なまでの美しさを見せて咲き誇っていた。
「お彩ッ」
その声に、女がつと振り向いた。
満月の光の下ではその妖しいほどの美貌がひときわ際立っている。まるで浜辺に群れ咲くハマナスの花のようにあでやかであった。
空恐ろしいほどの美貌だった。今宵の満月が零す光の雫が凝って人の形を取ったような―、この世のものならぬ美しさだ。
お絹の意識がたったひと刹那で過去へと引き戻されてゆく。
一人の男の貌が鮮やかに脳裡に蘇った。
吉之助もまた美しい男であった。初めて月の光の下で吉之助を見た時、お絹はやはり凍れる月のように綺麗な男だと思ったものだ。美貌で知られた吉之助の姉だけに、お縞もまた壮絶なまでの美しさを見せて咲き誇っていた。