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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
隣に立つ伊八も一斉に開く花の見せる光景に幻惑されているようである。陽が落ちても、海の上はまだ明るさをとどめていた。ふと空を振り仰げば、それもそのはずで、今宵は満月であった。
その時、お絹は愕然とした。よくよく見れば、一面に咲く濃い桃色の花の中に一人の女がひっそりと佇んでいた。花のあまりの美しさに心奪われていたゆえ、その存在に気付かなかったのだ。だが、お絹には女が忽然と咲き誇るハマナスの花の間に立ち現れたように思えた。
女の腕には何か荷物のようなものが大事そうに抱えられている。
否、あれは荷物などではない。紛れもない人の子、赤ン坊か幼児だ。
その時、お絹は愕然とした。よくよく見れば、一面に咲く濃い桃色の花の中に一人の女がひっそりと佇んでいた。花のあまりの美しさに心奪われていたゆえ、その存在に気付かなかったのだ。だが、お絹には女が忽然と咲き誇るハマナスの花の間に立ち現れたように思えた。
女の腕には何か荷物のようなものが大事そうに抱えられている。
否、あれは荷物などではない。紛れもない人の子、赤ン坊か幼児だ。