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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
―お前が好きだ。
たったひと言を残し、お絹や腹の子を以蔵の放った刺客から身を挺して守った吉之助。吉之助は生命を賭して惚れた女と我が子を救ったのだ。それがお絹を拉致し閉じ込め、陵辱の限りを尽くし挙げ句に孕ませた男が見せた最後の、たった一つの真だった。
伊八と別れ、江戸から離れた村で一人暮らしていた頃、お絹はいつもそれとなく家の外から見守っている吉之助の姿を確かめて安堵していたものだ。吉之助はけして無体なことはしなかったし、必要がない限り、家の中に一歩も足を踏み入れようとさえしなかった。吉之助なりのけじめをきちんとつけているように思えた。
たったひと言を残し、お絹や腹の子を以蔵の放った刺客から身を挺して守った吉之助。吉之助は生命を賭して惚れた女と我が子を救ったのだ。それがお絹を拉致し閉じ込め、陵辱の限りを尽くし挙げ句に孕ませた男が見せた最後の、たった一つの真だった。
伊八と別れ、江戸から離れた村で一人暮らしていた頃、お絹はいつもそれとなく家の外から見守っている吉之助の姿を確かめて安堵していたものだ。吉之助はけして無体なことはしなかったし、必要がない限り、家の中に一歩も足を踏み入れようとさえしなかった。吉之助なりのけじめをきちんとつけているように思えた。