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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
「俺はお前を許さねえ。血のつながった伯母だろうが何だろうが、お前にお彩は渡さない。この子は俺の大事な娘なんだ」
伊八は叫びながら泣いていた。
一方、女の方は伊八の台詞を聞いているのかいないのか、まるで素知らぬ風である。お縞は腕にお彩を抱いて、ゆっくりと揺らしていた。まるで宝物を腕に抱くように、さも大切そうに抱いて。
静かに打ち寄せる波の音に混じって、低く歌声が聞こえてくる。子守唄のようであった。
「お縞さん、お彩を返して下さいませんか。その子がいなくなっちまってから、私たちは夜も眠れずに探し歩いてるんです」
お絹が懸命に言うと、お縞の美しい貌に微笑が浮かんだ。満月に照らされたその微笑は神々しいほどで、いにしえの物語に出てくるなよたけの姫かとも思わせる。
伊八は叫びながら泣いていた。
一方、女の方は伊八の台詞を聞いているのかいないのか、まるで素知らぬ風である。お縞は腕にお彩を抱いて、ゆっくりと揺らしていた。まるで宝物を腕に抱くように、さも大切そうに抱いて。
静かに打ち寄せる波の音に混じって、低く歌声が聞こえてくる。子守唄のようであった。
「お縞さん、お彩を返して下さいませんか。その子がいなくなっちまってから、私たちは夜も眠れずに探し歩いてるんです」
お絹が懸命に言うと、お縞の美しい貌に微笑が浮かんだ。満月に照らされたその微笑は神々しいほどで、いにしえの物語に出てくるなよたけの姫かとも思わせる。