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凍える月~吉之助の恋~
第11章 第四話 【はまなすの子守唄】 其の参
―ありがとうよ。
吉之助の最期の言葉がお絹の中で幾度も繰り返される。まるで過去の想い出という名の亡霊が茨となってお絹の全身を絡め取っているようだった。お絹は今、吉之助のありし日の笑顔や声に囚われて、身動きさえできない。 思わず両耳を手で覆った時、鋭い声が立ちこめ始めた宵闇をつんざいた。
その声に、お絹はやっと過去から解き放たれた。
―お前さん!!
「手前、俺の娘に何しやがる」
伊八が唸り声を上げながら、お縞に突進していった。低い声はまるで獣の咆哮のように聞こえる。
吉之助の最期の言葉がお絹の中で幾度も繰り返される。まるで過去の想い出という名の亡霊が茨となってお絹の全身を絡め取っているようだった。お絹は今、吉之助のありし日の笑顔や声に囚われて、身動きさえできない。 思わず両耳を手で覆った時、鋭い声が立ちこめ始めた宵闇をつんざいた。
その声に、お絹はやっと過去から解き放たれた。
―お前さん!!
「手前、俺の娘に何しやがる」
伊八が唸り声を上げながら、お縞に突進していった。低い声はまるで獣の咆哮のように聞こえる。