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凍える月~吉之助の恋~
第13章 第五話 【雪うさぎ】 弐
これは後に里絵が少し照れながらも嬉しそうに教えてくれたことだが、拓馬は里絵を見るといきなり土下座して手をついたそうだ。流石に里絵もあまりに突然のことで、呆気に取られたという。
―ここで今、そなたを一人河北に帰せば、わしはこれから先ずっと後悔しながら生きてゆくことになるだろう。そんな想いは、もうたくさんだ。
拓馬はまた、そうも言ったという。
むろん、里絵は拓馬の申し出を受け容れた。二人は、拓馬の暮らすこの甚平店で共に住むことになったのである。今日は里絵がこの裏店の新しい住人になったということで、朝から長屋中を一軒ずつ訪ね、挨拶に回っているらしい。挨拶のしるしにと手拭を配っているのだ。
―ここで今、そなたを一人河北に帰せば、わしはこれから先ずっと後悔しながら生きてゆくことになるだろう。そんな想いは、もうたくさんだ。
拓馬はまた、そうも言ったという。
むろん、里絵は拓馬の申し出を受け容れた。二人は、拓馬の暮らすこの甚平店で共に住むことになったのである。今日は里絵がこの裏店の新しい住人になったということで、朝から長屋中を一軒ずつ訪ね、挨拶に回っているらしい。挨拶のしるしにと手拭を配っているのだ。