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凍える月~吉之助の恋~
第14章 第六話 【対岸の恋人】
―わしは伊八の眼が気に入ったのだ。すべてを捨てたからには、何が何でもいっぱしになってやると意気込んでいるあの眼―、かつては、わしもあんな眼をして富平親方の前に立ったものよ。
偏屈で絶対に弟子を取らないという喜作がなにゆえ伊八を弟子にしたのか。控え目に訊ねたお絹に、喜作は遠くを懐かしむような眼差しで語った。喜作は十五の伊八に、かつての自分を重ねて見ていたのに相違なかった。
喜作がもし伊八に弟子入りを許さなければ、伊八は他にどこにも行き場がなかった。喜作は伊八にとって一生の恩人でもあった。
―判りました。及ばずながら、私にできることなら、させて貰いますよ。
偏屈で絶対に弟子を取らないという喜作がなにゆえ伊八を弟子にしたのか。控え目に訊ねたお絹に、喜作は遠くを懐かしむような眼差しで語った。喜作は十五の伊八に、かつての自分を重ねて見ていたのに相違なかった。
喜作がもし伊八に弟子入りを許さなければ、伊八は他にどこにも行き場がなかった。喜作は伊八にとって一生の恩人でもあった。
―判りました。及ばずながら、私にできることなら、させて貰いますよ。