この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
ようよう陸(おか)に上がった女に駆け寄った一人の男がいた。女は全身から水を滴らせながらも、意外にも元気なように見えたが、立ち上がって二、三歩あるいた途端、よろめいてフラリとその身体が傾いだ。
その華奢な身体を横から支えたのは、他ならぬ男であった。男はずぶ濡れの女を抱きしめ、懸命に何事かを囁いている。
「医者だ、医者を呼んでこい」
誰かが叫んだ。対岸の男のたちの中の一人が慌てた様子走り去っていった。医者を呼びにいったのかもしれない。
「あれは―お邦ちゃんじゃないかえ」
傍らで声がして、お絹は愕いて声の主を見つめた。いつしか、泊やの女将が川原にいた。
「女将さん、あのお人はお邦さんといいなさるんですか」
その華奢な身体を横から支えたのは、他ならぬ男であった。男はずぶ濡れの女を抱きしめ、懸命に何事かを囁いている。
「医者だ、医者を呼んでこい」
誰かが叫んだ。対岸の男のたちの中の一人が慌てた様子走り去っていった。医者を呼びにいったのかもしれない。
「あれは―お邦ちゃんじゃないかえ」
傍らで声がして、お絹は愕いて声の主を見つめた。いつしか、泊やの女将が川原にいた。
「女将さん、あのお人はお邦さんといいなさるんですか」