この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
凍える月~吉之助の恋~
第15章 第六話 【対岸の恋人】 弐
お絹が問うと、女将はしたり顔で頷いた。
「うちの旅籠の近くに住む娘っこですよ。父親を早くに亡くして、病気の母親ち二人だけの暮らしだけど、よく働く良い子でねえ。うちにも息子がいたら、嫁に貰いたいほどだっていうのに、あの薄情でろくでなしの五平の奴がお邦ちゃんを見捨てていったのさ」
女将はいかにも腹立たしげに言ったが、しまいにポツリと呟くように言った。
「もっとも、五平があちら側に去ったのは、お邦ちゃんをこの村の庄屋の一人息子が見初めたからってえいうのが本当の理由らしいけどね。男の女のことなんて、その当人同士しか判りっないから」
女将はそれから問わず語りにお邦という娘の身の上を語った。
「うちの旅籠の近くに住む娘っこですよ。父親を早くに亡くして、病気の母親ち二人だけの暮らしだけど、よく働く良い子でねえ。うちにも息子がいたら、嫁に貰いたいほどだっていうのに、あの薄情でろくでなしの五平の奴がお邦ちゃんを見捨てていったのさ」
女将はいかにも腹立たしげに言ったが、しまいにポツリと呟くように言った。
「もっとも、五平があちら側に去ったのは、お邦ちゃんをこの村の庄屋の一人息子が見初めたからってえいうのが本当の理由らしいけどね。男の女のことなんて、その当人同士しか判りっないから」
女将はそれから問わず語りにお邦という娘の身の上を語った。