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凍える月~吉之助の恋~
第16章 第七話 【辻堂】 一
おとっつぁんは、おっかさんの亭主であると共にお彩の父親なんだよ。そのことは、たとえ天地がひっくり返ったとしても未来永劫変わるもんじゃない。お前の大切なおとっつぁんをお前から取り上げるような真似をすると思うかい?」
お彩は後々―、彼女が大人になって以後も、このときの母の言葉を忘れることはなかった。
―おとっつぁんは、おっかさんの亭主であると共にお彩の父親なんだよ。そのことは未来永劫変わるもんじゃない。
この台詞を母はあの時、一体どんな想いで幼いお彩に囁いたのだろうと、長じたお彩は切なく思い起こすことになった。母のこの短い言葉の中にいかほどの重さが、真実が含まれていたのかを、四つのお彩は知る由もなかった。
お彩は後々―、彼女が大人になって以後も、このときの母の言葉を忘れることはなかった。
―おとっつぁんは、おっかさんの亭主であると共にお彩の父親なんだよ。そのことは未来永劫変わるもんじゃない。
この台詞を母はあの時、一体どんな想いで幼いお彩に囁いたのだろうと、長じたお彩は切なく思い起こすことになった。母のこの短い言葉の中にいかほどの重さが、真実が含まれていたのかを、四つのお彩は知る由もなかった。