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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
 が、伊八はいっそう強くお絹を抱きしめた。
「何も言うんじゃねえ、何も言わなくて良い」
 そう言って、お絹の髪を撫で続ける。
「お絹ちゃん、祝言を挙げよう」
 お絹の髪を愛おしげに撫でながら伊八が洩らした呟きに、お絹は愕いて弾かれたように顔を上げた。
 伊八の屈託ない笑顔が眼の前にある。
「こんな私で良いの?」
 お絹が問うと、伊八は涙に光る眼で幾度も頷いた。
 漠然と予期していたこととはいえ、伊八が闇の組織と拘わっていたという事実は、あまりに衝撃的であった。だが、伊八は伊八であることに変わりはなく、お絹にとっては何より大切な存在だ。
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