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凍える月~吉之助の恋~
第3章 第一話 【凍える月~吉之助の恋~】 三
 大好きな陽なたの匂いがお絹をすっぽりと包み込む。
「怖かったろう、ごめんな、もう二度とお絹ちゃんをこんな目には遭わせねえ。守ってやれなかった俺を許してくれ」
 伊八のお絹を抱きしめる手が慄えている。ぴったりと重なり合った伊八の身体の慄えが伝わってきて、伊八が泣いているのだと判った。
「伊八っつぁん、私―」
 お絹は瞳を潤ませて、伊八を見上げた。
 伊八の腕の中のお絹は、肌襦袢一枚きりの姿だった。それだけでも、囚われていた間中、お絹がどのような扱いを受けていたかを物語っている。
―こんなに汚れてしまった身で、伊八っつぁんの傍にいても良いの?
 その言葉が喉許まで出てきていた。
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