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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
その男は夕日の差す細い道に、ひっそりと影のように佇んでいた。まるで樹の落とす影に溶け込んでしまいそうなほどひそやかに存在していた。
男の貌(かお)は逆光になっている。
ふいに陽が翳り、男の貌がはっきりと眼に映じた。その刹那、お絹は刻(とき)が止まった。
「―!」
だが、我に返り、次の瞬間、慌てて戸を閉めようとした。が、その前に男の逞しい手がお絹の手を押さえ込んだ。
男はお絹の手を押さえたまま、強引に中に入ってきた。あろうことか、男は吉之助だった。吉之助はお絹の身体を抱きすくめた。
「いやっ、誰か―」
お絹は渾身の力で暴れた。何故、この男が自分の居場所を知っているのだろうか。お絹の脳裡につい半年前の記憶が生々しく蘇る。
男の貌(かお)は逆光になっている。
ふいに陽が翳り、男の貌がはっきりと眼に映じた。その刹那、お絹は刻(とき)が止まった。
「―!」
だが、我に返り、次の瞬間、慌てて戸を閉めようとした。が、その前に男の逞しい手がお絹の手を押さえ込んだ。
男はお絹の手を押さえたまま、強引に中に入ってきた。あろうことか、男は吉之助だった。吉之助はお絹の身体を抱きすくめた。
「いやっ、誰か―」
お絹は渾身の力で暴れた。何故、この男が自分の居場所を知っているのだろうか。お絹の脳裡につい半年前の記憶が生々しく蘇る。