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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
その口調には切迫したものがあった。以前の吉之助の人を人とも思わぬ冷徹さや傲岸さはなく、ただ追いつめられたような必死さがあった。
お絹は別人のような吉之助の様子に、抵抗を止めた。吉之助はお絹が抗うのを止めると、土間に引き返して表の戸を閉めたが、その前に周囲の様子を注意深く窺うのを忘れなかった。
その身のこなしには隙がない。
お絹は息を呑んで、吉之助を見つめていた。
吉之助は戻ってくると、お絹を見た。相変わらず美しい男だった。切れ長の眼(まなこ)が射るようにお絹を見ていた。
「以蔵が刺客を放った。あいつはまだお前の生命を執拗に狙ってる」
「そんな―」
お絹は別人のような吉之助の様子に、抵抗を止めた。吉之助はお絹が抗うのを止めると、土間に引き返して表の戸を閉めたが、その前に周囲の様子を注意深く窺うのを忘れなかった。
その身のこなしには隙がない。
お絹は息を呑んで、吉之助を見つめていた。
吉之助は戻ってくると、お絹を見た。相変わらず美しい男だった。切れ長の眼(まなこ)が射るようにお絹を見ていた。
「以蔵が刺客を放った。あいつはまだお前の生命を執拗に狙ってる」
「そんな―」