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凍える月~吉之助の恋~
第5章 第二話 【鈴の音】 二
吉之助の言葉は思いもかけないものだった。お絹は慄然とした。
一体、自分はどこまで逃げれば良いのだろう。この現世(うつしよ)には自分の生きる場所はないのだろうか。どこまで逃げても逃げても、以蔵の怨念はお絹を追いかけ捕らえ、その鎖で絡め取ろうとする。
―この世に居場所がないのなら、いっそのこと死ぬまで!
お絹は咄嗟の衝動で土間に走り降りた。むろん、裸足だ。そのまま厨房として使っている一角に走り寄り、台の上から包丁を取った。
包丁で胸を刺し貫こうとするのを吉之助が傍から取り上げた。
「止めるんだ。お前の腹にはガキがいるんだろう」
お絹はその場にへなへなと座りこんだ。
涙が次から次へと溢れ出る。透明な雫が白い頬をころがった。
一体、自分はどこまで逃げれば良いのだろう。この現世(うつしよ)には自分の生きる場所はないのだろうか。どこまで逃げても逃げても、以蔵の怨念はお絹を追いかけ捕らえ、その鎖で絡め取ろうとする。
―この世に居場所がないのなら、いっそのこと死ぬまで!
お絹は咄嗟の衝動で土間に走り降りた。むろん、裸足だ。そのまま厨房として使っている一角に走り寄り、台の上から包丁を取った。
包丁で胸を刺し貫こうとするのを吉之助が傍から取り上げた。
「止めるんだ。お前の腹にはガキがいるんだろう」
お絹はその場にへなへなと座りこんだ。
涙が次から次へと溢れ出る。透明な雫が白い頬をころがった。