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水流金魚
第5章 金魚鉢の金魚
***
目が覚めると白い天井が見えた。窓の外は暗い。月明かりだけが光っている。色々な管と呼吸器をつけられていた。
「花!」
「花さん」
「花ちゃん」
少し顔を上げると翔ちゃん、お父さん、木崎夫婦、ミキと透くんがいた。
「咲ちゃん……」
ふいに口に出たのは今、声に出しては絶対にいけない人の名前で。
「っ……てんめっ!」
「瞬さん……いいっ……」
翔ちゃんが言い終わるより先にパァーンと渇いた大きな音とともに頬に痛みが走る。
「この! バカ娘! 命だけは粗末にするな。母さんも天国で泣いてるぞ」
「お父さん……。ごめんなさい」
父親の泣いた顔を見たのは、母親が亡くなった時以来だ。もうあれから二十年は経つのか。
「病院の先生を呼んでくる」
病院の先生の話では、父親の発見が早かった為、後遺症などは残らないですむらしい。ただ、度重なるODで内臓が弱っているので気を付けないといけないとのことだった。