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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第9章 "急"


当代様は口に含んだ頂と、己の指先にある頂を同時に少しキツめに潰した!!

「あ"っ!?
ぁぁぁぁーっ!!」

限界を超え頭の中が真っ白になる程達したらしい…
瑠衣の力がガクンと抜けた……

とっさに支える当代様、瑠衣の額に口付けを落とし、着流しの合わせを戻してやる(切ってしまった帯は戻せ無いが)…


暫くして息の整った瑠衣がだるい体をゆっくりと起こした。

「やりすぎたか?」

当代様はさも面白そうに言う。

「やりすぎです…
早く痕消して下さい…」

「分かっておる、少しくらい余韻を楽しんでもよかろうて…」

「知りませんっ!!」

当代様から目を背ける瑠衣…
幾らなんでも羞恥心と言う言葉は自分にだとてある。

「そう怒るな…」

当代様は目を細めて優しい顔をしている。


(めったにお目にかかれない顔だなぁ…)


つい不謹慎にも思ってしまう。

「どうかしたか?」

当代様は瑠衣の首筋に指先をやり痕を消していく…

「いえ、ただ当代様でもそのようなお顔をするのだと思って…」

思わずクスクスと笑ってしまう。

「我にも感情はあるぞ?」

「勿論承知しております」

それでも、あまり笑わなかったなと子供の先代を思い起こしていた。


(この様に笑うんですね…)


"時渡り"の特権だなと思ってしまう…
当代様は気付かぬ内に全ての痣を消し終わっている。

「…ありかとう御座います」

お陰で力は完全に回復している、ただしやり方に少々問題はあるが…



「さて…
そこな者、いい加減出て来たらどうじゃ?」

無表情に戻り総司と山崎を呼ぶ当代様。

「・・・・・」

居る事は初めから分かっていた…
試合は‥まぁ良いが、不可抗力とは言えあんな姿まで見られてしまい、どの様な顔をすれば良いか戸惑どってしまう。


 「「・・・・・・・」」


総司と山崎は当代様に呼ばれ、静かに道場に入って来た。

「覗き見も良いが、もう少し気を使わぬか…」

「・・・・・」

俯く瑠衣、とてもじゃないが恥ずかしくて顔も上げられない…

「申し訳御座いません、その様なつもりでは無かったのですが…」

「つい、最後まて……」

二人共居心地悪そうにして道場内に立っている。
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