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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第10章 "恋"
「沖田はん、大丈夫かいな?」
山崎も流石に不安を隠せないでいる……
自室に戻り慌てて着替え、大刀と脇差しを腰差し屯所の門に走る…
そこには既に総司が待機していた。
「すみませんっ、遅くなりましたぁ!!」
「いえ、私も今来たばかりですよぉー」
二人共、隊服は着ていない。
総司は灰色の着物と袴に灰黒の羽織、瑠衣は少し薄い紺色の着物と袴に紺色の羽織。
隊服で巡察しないとなり、土方が支給‥(出されたのは金子で、後は目立たん色の着物を勝手に買って来いだった)したものである。
「今日は山崎さんが付きますので…
さぁ行きましょうか」
「はい、本日もよろしくお願いします」
二人は屯所から出て京の街へと消えていった。
夜ー
「今日は当たり無しですかねぇ橘さん」
山崎の姿が見えない、多分捜索中であろう。
「居ない方が良いと思いますが??」
「そうなのですけどね、ただ歩くのは勿体ないです」
(物騒な事言わないで下さい…)
巡察すれば必ず何か当たるわけではない…
当然空振りだってある…
なのに総司はただ歩くだけではつまらないと言っているのである。
「沖田先生、考え方が物騒ですよ、何事も無く終わり良ければ全て良しです」
「だって…」
「だって、何ですか?」
「つまらないじゃぁ無いですかぁ、せっかくの巡察なのに…」
「巡察なんですから、もっと気を張って下さい!!」
これじゃ駄々っ子の慰め役である…
(勘弁して欲しい…)
幾ら瑠衣だとて毎日毎日"鬼"や不逞浪士には出会いたくないが本音だ、仕事は真面目にするが無駄な事は論外である…
そんな事を思っていたら屋根の上から声がした。
「お二人さん、仕事でっせー
二本向こうに不逞浪士がわんさか居るでぇ」
「今日の巡回の隊は?」
「三番隊やけど逆方向やなー」
「沖田先生、行きますか?」
「そうですね、山崎さん、正確な数は分かりますか?」
「気配からして十人程度やな」
それならば二人でなら何とかなる数である。
「橘さん、行きますよ」
途端に総司の気配が変わる…
剣豪沖田は名ばかりではない。
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