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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第10章 "恋"



 『ザシュ…』


袈裟切り一つ繰り出して、そのまま浪士達に飛び込んで行く…残りは頭と思われる浪士と忍が一人…

そんな中…


 『ドカッ!!』


屋根の上から刃物の音が聞こえ、忍が転がり落ちて来た…

「わい、忘れてないん?」

屋根の上は勿論山崎である。

「忘れてませんよぉー」

総司と瑠衣は残る頭らしい浪士の前に立つ。

「先生、生け捕りですか?」

「そうですね、一人くらい捕まえないと土方さんが五月蝿いですし…」

そう聞くや瑠衣は頭に峰打ちを決め、もう一押しとばかりに首に手刀を入れる。

辺り一面浪士の死体と血の海、その独特の生臭い鉄の匂いが辺りを充満していた。


「沖田はん、わては三番隊呼んで来ますわ」

山崎はそう言い残し、屋根伝いに向こうへと飛んでいく。

「ひい、ふう、みい…
ちゃんと十二ありますね」

死体の数を数えてる総司…
瑠衣は生け捕りにした男に縄を打っている。

そんな矢先三番隊が駆け付けた…
多分斬り合いの音が聞こえていたのだろう
それくらい今の京の夜は静けさに満ちている。


斎藤は来るなり総司を見やる…

「また派手にやったな…」

首が無い者、体と胴体が切断されてる者…
その光景はまるで地獄絵図そのもの…
なのに総司と瑠衣は返り血一つ浴びてない。

「斎藤さん、頭らしき人物を一人捕らえています」

瑠衣の横に縄で縛られた浪士が一人…。


(総司なら全員殺してたな)


ちらりと瑠衣を見、土方の配置は間違っていなかったと思う…
今まで総司を止められる奴は限られてるからだ。

一番隊として巡察に出たら平隊士では総司を止められない。

そこに瑠衣を置く事で総司への抑止力になっているのが現状らしい。


(考えたな…)


何時も隊長格が一緒に行動する訳にはいかない…

そこで土方は瑠衣に目をつけたのだろう…
多分瑠衣の方も自分の役割を理解した上で行動している節がある。


「とりあえずご苦労だったな」

斉藤は平隊士に死体の後片付けと捕らえた浪士の搬送の命を出す。
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