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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第11章 "遊"

「それは……」
もし島原に売られる事が無ければ、普通の女子として普通に名を名乗り普通の生活を送って居たのかも知れない。
「沖田先生、あまり考え過ぎない事です」
そう一言言い、複雑な顔をして歩く瑠衣。
「・・・・・・・・・」
総司も掛ける言葉も無く、ただあぜ道を歩く。
「・・・
売られて来た者、騙された者、自分から進んで入った者、島原には人それぞれ事情の違う女達が居ます…
しかし皆、外に出れる日を夢見て必死に生きているんです…
外に出ればまた名が使える事が出来るかも知れない、普通の生活が出来るかも知れない
そんな事を考えながら皆あの場に居るんですから…」
大人な考えだと総司は思う…
自分は遊廓の表の部分しか見ていなかったのではないか、いや本当は見ようともしなかった‥そう思ってしまう…。
「・・・・・
私は何を見ていたのでしょうね…」
「男の方はそれで良いのかも知れません…
男の方が居なければ、女達の外に出る夢も費えてしまいます…
男の方が女を買わなければ、外に出る夢も現実にはならないんですから…
それが島原‥遊廓なんです」
「悲しい現実ですね…」
「しかし事実です…
すみません‥少し余計な事を話しました…」
瑠衣は悲しそうな顔をして俯いてしまう。
「いえ、男の私では一生見えない事だったのかも知れません…」
夜空を見上げ悲しそうに思う…
ただ遊女が嫌い、そんな一言で片づけてた自分が恥ずかしい…
その裏にある事実に目を背けて…。
「やはり先生はあまり考えない方が良いです」
瑠衣も夜空を見上げる…
その目には何の感情も、空の星すら映って無いようにも見える。
「橘さん・・・・」
「本当に長話し過ぎました…
屯所に帰りましょう沖田先生…」
この話はもう終わりと言いたいのか、空を見上げていた瑠衣は少し笑って総司を見た。
「…そうですね…
帰りましょう屯所へ…」
自分達が今居るべき場所は新撰組ただ一つなのだから…。
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