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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第12章 "鏡"
…そう言い、その女官は優雅に顔を上げる…
(・・・!!!!!!)
瑠衣はその顔に驚き暫くその場に固まって動けない…
女官は瑠衣が動かないのを不思議に思い声を掛けて来た。
「どうかなされましたか?」
はっと我にかえる瑠衣。
「…いえ、何でもありません……
案内をお願いします…」
「はい、勿論心得ております」
女官は前を歩き出す…
瑠衣は俯いたまま後に続き、広い表宮の中を歩き出した。
暫く長い廊下を歩るいていると、表宮と奥宮の中間辺りで女官の足は止まった。
「橘様、此方でお着替えをして頂きます…
この間は急な事故その様な暇は無かったのでしょうが、今日はその様な無粋な姿で主上に合わせる訳には参りません」
「…分かりました
しかし自分は男物しか着ませんよ?」
「それも主上から承っております」
二人は廊下伝いに数多くある部屋の一室の中に入って行く。
「お召し物は此方にご用意しております」
「申し訳ないですが、一人で着替えられますので…」
相変わらず瑠衣は下を向き、相手の女官を見ようともしない…
「…分かりました、
着替え終わったらお呼び下さい」
女官は静かに部屋から出て行った。
「・・・・・・・・・・」
下を向いている瑠衣、その唇は血が滲む程噛みしめている。
(…今更…)
嫌な考えを振り切り、のろのろと目の前にある着替えに手を伸ばす…
そこには本当に男物の一族独特の服が置いてあった。
白地に薄い紅色の刺繍が入った上着、下履きは同じ薄い白地と紅色で統一してある(基本的に清時代の中華服みたいな感じを連想して見て下さい)靴まで白一色にしてあるのだ。
「誰が選んだのか、随分手が込んでるな…」
一族の服の中でも最上級に入る一品である
瑠衣は着流しを脱ぎ捨て、与えられた服を身に付けだす‥
勿論着方なんか嫌と言う殆ど知っている…
着替え終わり朱桜刀を腰の後ろに差し、脇差しは腰の刀紐に括りつけ…
本来は朱桜刀一本が正式だが、総司から借りている脇差しなので置いて行くわけにもいかない…
だから脇差しは腰に差す事にした。
「髪は…
まぁこのままで良いか…」
相変わらず高い位置で一本に結ったまま…
そして嫌々ながらも外の女官に声を掛けた。
「では参りましょう」
部屋を出た瑠衣はまた広い表宮を歩き始めた。
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