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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第12章 "鏡"


表宮の長い廊下を女官の先導で歩いている
瑠衣は決して女官の顔を見ようとはしない、女官の方もそれに対して何も言っては来ないが…

暫く歩き長い外に面した廊下を渡りきった所で、奥宮の門が見えて来た。


「「・・・・・・・」」

門番は何も言わずにただ二人に対して扉を開ける・・・


(…どの時代も変わらないな…)


二人が中に進むと静かに扉は閉まった…

ただでさえ静かな外宮表宮、奥宮に入ると更に音が無くなる…
ただ木々が風に吹かれカサカサと言う音が響くのみ…
奥宮を少し進んだ所で女官は漸く止まった。


「此方にて主上がお待ちしております」

建物の作りは現代とそう変わりはない…
日本と清(中国)の建物を合わせたような作り、基本淡い白で統一された壁、外に面した廊下、どれも自分が見ている現代の外宮と同じ…
ただ、電気や水道といった生活基盤が違うくらいだ。


「主上、橘様をお連れ致しました」

床に方膝を着き、女官は部屋の中の主に向かって声を掛けた‥
自分には見慣れた光景…
式たり礼儀は今も昔もそう変わらない。

「…入れ」

中から当代様の声がする…
女官は静かに扉を開け瑠衣に中に入るように促した。

瑠衣はそれを見て部屋の中へと入る…
確認すると女官は静かに扉を閉め、奥宮の何処かへと消えて行った。


「…やっと来たか」

「当代様・・・・・」

「そう嫌な顔をするな…」

「いえ、これは当代様のせいではありませんので……」

「…???」

意味解らずとも当代様は兎に角座れと瑠衣を促す。

その言葉に近くの椅子に座る瑠衣…
当代様も適当な椅子に座った。


「…で、来る途中にでも何があったのか??」

瑠衣の肩が微かにピクッと揺れる…
なるべく動揺を隠すように、その顔は無表情に徹してはいるが……

「らしく無いな…
お前がそこまで動揺するなど余程の事か?」

此方の考えなど当代様にはお見通し、そんなのは十分承知している…
ただ、その理由が言いたくないと言うより言えないのだ。


「当代様、お願いが…」

「なんだ?」

「"翠蓮"を私の近くに寄せるのを止めて頂けませんか…?」

「何故だ?
優秀な女官だぞ?」

瑠衣の言葉に当代様は少々不思議な顔をしている。

瑠衣は此処でやっと顔を上げた、その表情は悲しみと複雑と困惑・・・

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