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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第12章 "鏡"
―――――――
それは瑠衣…いや朱雀が幼少の頃……
(卵の姫様…)
翠蓮は朱雀の身の回りの世話を一手に任されている女官。
この当時の自分はまだ朱雀を継承していなく、名を呼ぶのは憚られ"卵の姫"と通称で呼ばれていた。
「卵の姫様、本日も稽古お疲れ様で御座いました」
今日の修行が終わり部屋に帰って来た自分を、翠蓮は手拭いと着替えを持ちニコニコと世話をするそれが日常。
「翠蓮!!
今日は師匠と互角だったぞ」
楽しそうに翠蓮に話す自分、夜‥それも深夜になろうかという時間に、翠蓮と今日あった事を話すのが一番の‥いや唯一の楽しみであった。
「あの方と互角ですか、卵の姫様お強くなりましたね」
汗を拭いた後、着替えを渡してくれる翠蓮。
「師匠を追い抜く日が待ち遠しい」
多分この時、自分は八つか九つくらいであっただろうか…
産まれた時から朱雀の後継者とされ、親元を離され物心が付く前から刀を持ち修行をしていた。
四つになるかならない年で毎日二山をオモリりを持ち野を駆け抜け、昼は武術、夜は学術と忙しい生活をしていたと思う。
そんな厳しい中での心の安らぎが翠蓮であった。
自分が産まれた時から翠蓮は一緒で、この修行の場である人も近付かないような秘境の山の中で生活をしている。
翠蓮自体一族の中でも特に力と才覚を持ち誰にでも好かれる容姿、薄紫の髪は肩よりだいぶ下にあり、それを何時も後ろで一纏めにし、同じく薄紫の瞳は優しい色を称えている。
一時期は筆頭女官として朱雀の直ぐ側で仕えていた事もあり、その経緯が自分付きの女官になった主な理由、朱雀の最も信頼が厚い女官…それが翠蓮。
「さぁ卵の姫様お着替えが済んだのであれば早めにお休み下さい、明日も早いのですから」
「そうする」
自分は日々の疲れかさっさと寝所に潜り込む。
「クスクス…
ではお休みなさいませ」
微笑ましく此方を見てから、灯りを消し部屋を出て行く翠蓮…
この小さな幸せは、自分が朱雀を継承するまで続くと思っていた・・・・・
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