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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第12章 "鏡"


―――――――


(今更余計な事を思い出した…)


瑠衣は相変わらず長い廊下を歩いている……


あの時気づいていたら何かが変わったのか?

何故仕事と言い外に出てたのを不思議に思わなかったのか…??

翠蓮の罪とは一体何だったのか??


今更考えも結果は変わらない、それは十分分かっている。


(何故自分を裏切った…)


多分その思いが一番強く心に残ってるいのだろう…

あの一件の後、自分は笑わなくなった‥
次第に喜怒哀楽という持っていた感情が消えていき、朱雀を継ぐ頃には完全に感情は無くなっており、そして現在に至る…


「・・・・・・・・・」

思い出を振り切るようにキッと前を見据える…
もう少しで表宮の入り口だ…
人が多く行き交う場所で、今ある感情を悟られぬように、ごく自然に普通を装って歩く…


門番に礼を言い外宮を出、暫く歩き京の街に入った…
外宮から抜けた事で大分気持ちに落ち着きが戻り、今は随分楽になっている事に気付く自分が可笑しい。


「・・・・・
沖田先生に甘味でも買って帰ろうと思ったけど、荷物もあるし真っ直ぐ帰るか…」

やっと気持ちに余裕が出来お土産なんて思ったが、かさばる風呂敷包みのお陰でお土産は諦めざる負えない。

そしてそのまま壬生方向‥屯所に向けて更に歩き始めた。




夕方屯所ー


瑠衣は京の端から端まで歩いた気分で屯所に辿り着く(本当に端から端かも知れない)…
そのまま自室には戻らず、先ずは土方の元へ向かう。


「副長、橘です」

「おぅ、入れ」

瑠衣は土方に声を掛け部屋に入った。


「ご苦労だったな、なんだ?
土産でもあるのか??」

部屋中央に座る瑠衣を見て、その側に風呂敷包みがある事に気付いたらしい。

「違います…
はぁ…兎に角朱雀様に例の品を渡して来ました、それから‥これは朱雀様からです」

横の風呂敷包みを土方の方へ押しやる…
眉間にシワを寄せて、風呂敷包みを受け取る土方…
風呂敷を解き中の箱を開けて不思議な顔をしている。


「橘これは??」

「朱雀様が言うには、その鏡で"鬼"の居場所が正確に分かるそうです」

「この鏡がか??」

「はい」

瑠衣は当代様から聞いた話をそのまま土方に伝えた。
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