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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第13章 "心"


新撰組・沖田総司の名は良い意味でも悪い意味でも京中に広まっている、ここで先生なぞ付けたら本人が此処に居ますと言っているようなものだ…。


「あ…んー・・・・・
では…沖田‥さんで良いですか?」

総司の名を呼ぶのが苦手な瑠衣すれば、これでも最大譲歩である…。

「仕方ないですねー
それで構いません」

お互いに今更偽名という訳にもいかず‥はっきり言って呼びにくいし間違えそうなので、その線で総司も妥協する。

「今日だけですよ?」

「分かっていますよ…」

実の所はかなり嬉しい総司、一日だけとはいえ先生では無くさん付けで呼ばれるのだから…。


「で、沖田さん何処に向かっているんですか?」

「神社仏閣が集まっている所を抜けた場所に竹林道があるのです、そこに向かってますが…」

「竹林道ですか?」

「はい、独特な雰囲気で綺麗ですよ」

「それは楽しみですね」

嵐山の竹林道、現代で写真や報道などで見てはいたが、実物は初めてである。

そもそも自分の場合、現代のものといっても知識のみが多い、基本的に本宮と外宮くらいしか行き来していないから…。


「後どれくらいですか?
というより沖田さん、よく嵐山なんて知っていましたね…」

総司は江戸‥多摩生まれの多摩育ち、京に来てまだ数年しか経ってない筈なのだが…

「あぁ…
前に護衛の仕事で来た事があるのですよ…
その時数日滞在したので、ちょっと抜け出してあちこち見て回ったんです」

…要するに、隊務をサボって子供のようにあちこち行っていたんだろう。

「はぁ…
らしいですね…」

総司のサボリ癖、別に今に始まった訳ではなく、江戸に居た頃からで…
よくサボっては土方に捕まっている過去が多々ある。

「ほらほら、もう少しですから急ぎましょう」

これ以上追求されたく無いので、とりあえず話を変えてみた…

今は丁度神社仏閣の密集地を歩いている、竹林道までもう直ぐだ。

「はいはい…」

あえて総司の話に乗る瑠衣、今日くらい仕事の事は頭の隅に置いておきたい為である。


神社仏閣の密集地帯を抜けると、そこには回り一面竹林の壁のような一本道に入った・・・
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