この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第13章 "心"
(橘さんは時々不思議な事を言うのですね)
総司は瑠衣を見てそう思う…
今みたく何処にでもいる普通の感じだったり、そうかと思えば突然思慮深く自分の考えの遥か上を行く事もある…
そして‥時々何処か遠く‥自分達と違うものを見ている、そんな感じを受ける事も…
(本当に…
この人は何者なのでしょうか…)
礼儀正しく誰にでも良く話し気さくな雰囲気なのだが、時々土方を手玉に取ったり、あの朱雀様相手に対等に渡り合ったりする…
どちらが本当の瑠衣なのか…
前者なのか、後者なのか、両方なのか、それとも全て違うのか…
毎日共に生活している総司にも、瑠衣の本音がいまいち分かりかねる…
こう・・・
掴み所が無い、その言葉が一番合うと思う。
「沖田さんは一人になりたいと思う事は無いですか?」
「一人ですか?」
「はい、何時もとは言いませんが、たまに一人になりたい…
そういう感じです」
多摩に居た頃から常に自分の周りには誰かが居た…
それが当たり前で、一人なんて考えた事が無い。
「私は…
皆と共に居る時間が大切です…
笑ったり、怒ったり、悲しんだり…
それは一人では出来ない事ですから…」
「・・・・・
そうですね、一人で居ると喜怒哀楽という感情は出ないでしょう…」
何処か辛そうに、そして切なそうに言う。
(あぁ‥この表情だ…)
あの夢に出て来た瑠衣がしていた顔…
正に今見ているそれである。
「橘さんは何か辛い事があるのですか?」
「えっ???」
何故とばかりに総司を見つめる瑠衣…
「何処か辛そうな顔をしています…
私では何の手助けも出来ないのですか…?」
「辛そう・・・・・・・??」
自分の事なのに分からない…そんな顔をしている。
(もしかして…無意識??)
瑠衣の顔を見ていてそう思う。
「自分辛そうですか??」
「…はい、偶にそんな顔をするのです…」
「辛い…」
また、何かを考えてる。
「橘さん…」
「はい」
「…もしかして自分が何で辛いのか分からないのではありませんか??」
総司の言葉に瑠衣の目が大きく見開く…。
・