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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第13章 "心"
「…分からない…確かに…そうかも知れません」
瑠衣は予想外にあっさりと認めてしまう。
「どうして分からないか聞いても良いですか?」
「…それは…」
俯く瑠衣……
(あぁ…橘さんは理由を理解しているのですね…)
瑠衣のこの態度で自分だって直ぐに分かる。
「話せませんか…?」
「…それは…
何から話して良いのか…戸惑いがあります…」
「戸惑い…ですか…?」
「はい…」
竹林の中で二人の時間が止まったように感じる…
「・・・・・
兎に角もう少しこの道を満喫したいです…」
そう言い道の向こうを見ている瑠衣…
「・・・・・・・
分かりました、せっかくの竹林道ですからね…」
「はい、我が儘言ってすみません…」
「いえ、行こうと言ったのは私ですからね」
「もう少し…」
「えっ?」
総司は瑠衣の言葉を聞き返す…
「もう少し…
このままが良いです…」
その言葉に総司はにっこり笑って頷いた
はぐらかされたのは理解していだが、今ここで追求するべきでは無いと思う…
それから後の二人は竹林の中をただ無言で歩き続けた…。
竹林道を抜けた頃には日はもうだいぶ傾いて、夕焼けも落ちる頃になっていた……
総司と瑠衣は、このまま嵐山を降り屯所に帰るのを諦め、嵐山の中にある一件の宿屋に泊まる事になった。
部屋に通され、大刀と脇差しを置く…
瑠衣は窓を開け紅葉を眺めている。
「急でしたけど良い宿屋ですね、見晴らしも綺麗ですよ」
瑠衣の言葉に総司も窓から紅葉を見る…
「そうですね、少し高台にありますから麓の紅葉がはっきり見えますね」
まだ少し残る夕焼けの光に映し出された瑠衣は、キラキラしていて綺麗と言うしか無い…
総司は紅葉より瑠衣の姿をずっと見つめていた…。
「あぁ、橘さん夕餉は京料理ですけど大丈夫ですか?」
普段、屯所の料理は江戸風の味付けが多い、作るのが井上と島田が主力のせいであるけど…
「はい、自分あまり好き嫌いはありませんから…
あっ、甘味の食べ過ぎだけはちょっと無理ですけど…」
クスッと笑い総司の方を見る。
「えー!!
甘味が無かったら、私餓死してしまいますよぉー」
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