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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第13章 "心"


「沖田さん…
甘味はおやつですよ・・・」

「私には主食に近いです!!」

ここぞとばかりに総司ははっきりと断言する…

「主食…って…」

最早呆れ顔の瑠衣、甘味が主食なんて人間は聞いた事が無い、逆に言えば総司だけで十分かも知れない…

そんなやり取りの中、女中達が夕餉を運んで来た。


「ごゆっくりしておくれやすぅ」

そう言い残して女中は部屋を出て行く。

「温かい内に食べましょうか、私歩き過ぎてお腹すき過ぎました」

「クスクス…
そうですね、食べましょう」

お互いに向かい合わせのお膳に座り、夕餉を食べ始めた…

お酒も付いており、仲良くお酌をしながら、この料理は美味しいだの、珍しいだのと笑談しながら箸を進める一時の楽しい団らん…


楽しい夕餉も食べ終わり、風呂に入り(瑠衣が入る時は総司が外で見張っていた)寝間着に着替えて、布団の上に居る
ある意味屯所の自室と同じ光景である。

…そんな時、瑠衣が急に総司に向かって話をし出した…。


「沖田さん、先程竹林道でどうして辛いか分からないと言いましたよね…」

先程の辛いと言うのが分からない…
話すのに戸惑いがある…
その事だろう…。

「はい、言いました」

総司は瑠衣の方を向き‥その目は真剣そのもの…
自分も背を正して座り直し、瑠衣の目を真剣に見つめる。


「・・・・・・・
感情が分からないんです」

瑠衣は少し躊躇いそう切り出した。

「分からない??」

「はい、此処に来るまで自分にはあまり感情表現というのが無かったんです…
勿論、楽しい、怒る、悲しい、その言葉の意味は理解していますが、こんな風に表に出した事が無い‥です
ですから、辛いとか、切ないとか、曖昧な感情が自分にはいまいち理解が出来ないんです」

今までどんな生活をしたら、その様になるのか…総司は驚きで言葉が出ない…。

「一番近い表現に例えたら、何でしょう…
"人形"…そんな言葉が合っている気がします」

「しかし…
確か月詠さんと仲良く遊んで居たと……」

衝撃的な言葉の数々の中、総司はやっとの思いで口を開く…

「…はい、子供の頃は確かに感情はあったと思います…
しかし大人になるにつれて、それすら忘れてしまっていたんです」

どうしたら其処まで感情を忘れられるのだろう…??
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