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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"


「やだなぁ橘さん、私は其処まで弱くは無いつもりですが…」

「・・・
沖田先生…」

瑠衣は廊下ど真ん中で立ち止まり、真剣な顔で総司を見た…

「何でしょうか…?」

総司も何時になく真剣な顔の瑠衣を見、此は只事では無いと思い直し、此方も真剣に聞き返す。


「もし"鬼"の心の臓が二つ以上ある奴に出会ったら、無理せず後退して下さい…」

心の臓が二つ以上??

総司は今までを考え、そんな"鬼"に遭遇していないと思い、不思議そうに瑠衣を見るが…

「今までは心の臓が一つか二つの低級の"鬼"にしか遭遇していなかったですが、最近の事情を考えると、もしかしたら上級が出現する可能性があります…
上級は心の臓が三つから五つあるんですよ」

「"鬼"にも区分があるのですか!?」

「はい、低級と上級…
力の差は歴然です、低級百匹束になっても上級には勝てません…
普通上級の"鬼"とは出会う事も稀ですが、何だか嫌な予感がするんです…
自分のこういう予感は嫌な程当たりますので…」

「低級百匹でも適わない…」

総司は瑠衣のその真剣な言葉に、流石に背筋がゾッとするものを感じる


「はい、出来る事なら会いたくは無いですけど…」

上級相手は本当に面倒くさい、その一言に尽きるのだ…

「とりあえず頭の中には入れときます」

「はい…」

一旦話は終わりと二人はまた廊下を歩き出た・・・



自室に戻り巡察の準備を始める瑠衣は、箪笥の奥に詰め込んでいた現代から持って来た袋を一つ取り出した。

「橘さん、それは?」

袋の中から御札らしき紙の束を一組取り出し総司に見せた‥

「沖田先生一つ持っていて下さい、これは結界符と言い、八枚一組になっていて、相手に投げるだけで相手の周りに"動き封じ"の結界が作れます」

そう言い総司の手にその結界符を渡す‥
文字が書き込まれてる八枚の紙を銀色の髪らしき細い物で括られている。

「上級相手では、一時動きを止めるのが精一杯だと思いますが、もしもの時の為です」

「結界符…ですか……」

「はい、朱雀様の力が込められています」

本当は"時渡り"をする前に優衣から渡された物…
本当の所は、同じ朱雀である自分が作った物である。

「朱雀様の力ですか!?」
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