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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"


「ではやはり"時渡り"も使用出来ないと…」

「多分な…
力の方向性は違えど、時空と長距離移動という点では同質、まず無理であろう…」

「・・・・・」

"時渡り"にも制約と法則がある…

その時代に始めて姿を現した場所から遠くなると"時渡り"は使えなくなる

つまり始めて姿を表したこの新撰組屯所から離れば離れる程"時渡り"は難しくなるのだ。

だが屯所の上には結界がある、試してはいないが当代様の言う通り"時渡り"は使えない、あの桜の木の周りから時空の波動が伝わって来ない、それ即ち時空に出る空間が塞がってる証拠。


「我とて不足の事態だ、完全に歪んでおる」

そう‥自分が知っている歴史でも、この様な事件は無い…

ではどうして歪みが出た??

それも、この様な巨大な歪みなど…


「‥歪みとして、一族が動いているんですか?」

「あぁ、かなりの人数を投入しておるが、理由も結界の仕組みもまだ把握出来ておらん」

今度は当代様が嫌な顔をしている‥

「…そうですか…
敵はなかなかの策士ですね…」

「そうだな…
此方が動き出すのを見越しておる」

嫌な奴…
頭も良く力も強い、そして此方ですら把握出来ない術、厄介な相手だ…

「だがこの様な大結界を作るに一人では無かろうて、必ず尻尾を出して来る…
当面はそれを待つしかあるまい」

「仕方ありませんね…
自分一人では行動に限界がありますし、そこは当代様にお任せいたします」

「あぁ…
何か状況が変わったら連絡する、それと連絡役に一人付けるが構わぬか?」

「……翠蓮以外でしたら誰でも…」

「うむ、了承した…
ではな、我も忙しい…」

「はい、お忙しい所申し訳ありませんでした」

当代様はニヤリとと笑い消える、つまり長距離は無理だが短距離の転移は可能という事だ…


「さて…
一体何が出てくるか…」

もう一度空の結界を見上げ、思いを振り切るかのように、瑠衣は屋根から降りた。

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