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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"
「分かりました」
今回ばかりは総司も真面目な態度だな…
そう土方は思っていたが、瑠衣が眠っている横で手を握っているのが見えた。
「おい…」
「なんですか?」
「なんで手ぇ握っていやがる…」
土方は総司と瑠衣の手を指差す‥
「あぁ…
橘さんが離してくれないんですよぉ…
流石に無理に離す訳にもいかないと思いましたので…」
どうしましょう的な顔の総司…
「まぁ…無意識か…
心細さでも出たんだろう…
暫く我慢するんだな」
土方はニヤリと笑い立ち上がる
「土方さーん…」
「知らん、お前がどうにかしろっ」
そう言い残し、さっさと部屋から出て行く。
「・・・・・まぁ…良いのですけどね…」
土方が部屋を出た途端、表情が和らぐ総司…
悪いと思いながらも土方とのやり取りは半分演技だった。
「しかし土方さん…
珍しく気づかないなんて…」
普段の土方なら総司の演技を見破っていた筈、流石にそれだけ瑠衣の怪我と総司の話に動揺していたのである。
「取りあえず…
どうしましょう…?」
離さない手…
無理に離そうと思えば出来ない事も無いが、総司にはそんな気はさらさら無い。
「……
一緒に寝ちゃいましょうか…」
総司も流石に疲れている…
瑠衣の布団に潜り込んで、相変わらず瑠衣を抱き込み手を握ったまま眠る事にした。
夕刻ー
「…んっ…」
ぐっすり眠った瑠衣は漸く目が覚めた…
(…随分安心して寝たな…)
本来気配や物音にはかなり敏感な方で、ちょっとした事でも直ぐに目が覚める。
眠りが限り無く浅い筈…
なのにこんな時間になるまで目が覚め無いなんて…
(やはり力の低下か?)
力が落ちれば落ちる程、眠りは深く、最後は仮死状態になってしまう。
"時渡り"中は、何があっても死なないし死ねない、"時渡り"の絶対の法則である
(死ねない自分、厄介な鎖だ…)
ふと回りを見て総司が居ない事に気付く(流石に昼過ぎに起きて布団から出ました…)
「・・・使うか…」
何とか布団から這い出て、箪笥に手を掛ける…
そして一番奥の袋から小瓶を一本取り出した。
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