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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"
もう一度瑠衣の様子を確かめてから、山崎は部屋から出て行ってしまう…
総司は温くなってしまった額の手拭いを取り替える…
瑠衣は高い熱で顔は赤く、浅い呼吸を繰り返している。
(・・・・瑠衣…)
そっと瑠衣の頬に触れてみる…
熱で頬は熱いが、何時か感じたようにその頬は柔らかい…。
(何故一人で解決しようとするのですか??)
頬に触れながら悲しそうな顔をする総司…
(何故…私を頼ってくれないのですか??)
瑠衣の頬に触れ、後悔という思いが顔に表れている。
(何を背負って…
何を目指して行動してるのでしょう??)
言えないと、あの時言われた部分に秘密があるとは思う
だが聞く事は出来ない‥
「私はあなたに何もしてあげられない‥のですか…」
感情が分からない、そう言った瑠衣…
だが決して感情が無い訳じゃない…
ちゃんと自分に対して感情を出してくれる…
少しずつだが確かに変化しているのに…
また元に戻ってしまうような錯覚に陥る。
(一人じゃ無いのですよ…
私はあなたを信じてます…)
総司の思い…
それは無意識に瑠衣に伝わっていた…
"一人じゃ無いのですよ…"
混濁の意識の中、総司の声が聞こえる…。
"私はあなたを信じてます。"
総司の心が瑠衣の中に入って来る…。
(…総司??)
不思議なくらい暖かい総司の声…。
(あぁ…
無意識に心読みを使ってしまってる…)
何とか自分の意識を保っても、強い総司の声を拾ってしまう…
"…瑠衣…"
声を出したくても出せない…
意識はうっすらあるが、答えられない…
"心読み"相手の心の中を覗き見る力…
(自分は使いたく無いのに…)
総司の強い思いが無意識に心読みをさせている…
(自分は親しい人の心を読むのは嫌…)
痛みと倦怠感、多分高熱で息も苦しい…
それでも頬に触れる総司の手から、心が勝手に流れ込む。
"私をもっと頼って下さい…"
(それが出来たら…)
朱雀としての自分が歯止めをかけている…
"…瑠衣…"
(お願い、そんな悲しく呼ばないで…
自分だって、総司を信用してる…いや…
したいと思ってる…)
"…瑠衣…"
(…そ…うじ…)
その暖かい心に、かろうじて保ってた意識すらも手放してしまった・・・