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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"
それから丸一日ー
瑠衣の意識は一向に戻る気配すら無い…
総司は汗で濡れた寝間着を取り替えたり、手拭いを交換したりと付きっきりで看病を続けている。
「沖田はん、橘どうや?」
もう日課のようになった山崎が部屋に入って来た。
「熱は少し下がったようですけど、まだ意識が戻りません」
「そうか…」
山崎は馴れた手付きで、傷の包帯とさらしを取り替え始める。
「まぁ…
無理もない、これだけの傷や、相当な痛みもあるさかい意識なんぞ簡単に飛んでしまうわ…」
山崎はそう言いながらテキパキと手を動かす…
「沖田はんが悪いのと違う、そこんとこは間違えて欲しくないんや…」
山崎は気落ちしている総司に向かって言う
「しかし、一緒に行動してたら、もしかしたら…」
「いや…
もし二人で行動してたとしても結果は同じ…
それ以上に被害があったと思う…」
包帯とさらしの交換を終え、総司の方に向き直る山崎‥
「もしかしたら、橘はこの事も考えて別行動を提案したんとちゃうか?」
「・・・・・・・・・・」
総司もその線は考えていた、瑠衣は自分を犠牲にしても他人を守る‥と…
「橘は決して弱わぁない、いや組一番強いと言っても良い…
それやのに沖田はん、あんはんが居たら橘の足手纏いになったとちゃうか??」
キツい言い方なのは十分承知している、だが納得させるには少々荒治療も必要だ…
「…それは…」
瑠衣が此処まで満身創痍な時に自分は何を出来る?
助けられるか??
……答えは否だろう…
逆に守られて足手纏いになる可能性がある…
悔しいが山崎の言う通りなのである。
「…山崎さん…」
何も言えず俯く総司…
「すまんな、けど橘と沖田はんの為や…」
「えぇ…
分かってはいます…」
ならええと山崎は立ち上がる
「すみません私の事まで…」
「隊の相談役も隊医の仕事やからなぁ…」
そう言って笑いながら部屋を後にした。
「ありがとうございます山崎さん」
山崎の言葉に、少し気が晴れた気分になる総司だった・・・
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