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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"
総司も気持ちを入れ替える為に、もう一度瑠衣を見てから部屋を後にした。
「総司!!」
大した当てもなく廊下を歩いていると、原田が総司を見付け駆け寄って来た。
「瑠衣の具合は??」
万が一を考えて土方は、同室の総司と隊医である山崎以外は部屋を立ち入り禁止にしている。
「今は落ち着いていますよ」
そこに藤堂と永倉、何故か斎藤の姿もあった。
「まだ目が覚めないのか?」
永倉が渋い顔をして総司に向かって言う。
「ええ…」
「瑠衣、そんなに酷いの?」
更に藤堂が詰め寄る。
「左肩の傷が酷いです…
その他にもあちこち傷が…」
正直に話す総司、皆心配している事を知っているから、隠す気は全く無い。
「あの瑠衣がやられるなんてなぁ…」
口調は軽いが、原田も心配してる事が分かる
「俺達も加勢出来たらな…」
後ろの方で斎藤がポツリと言う
「そうだな…
くそっ、何にも出来ないのがこんなに悔しいなんてな…」
「僕もぱっつあんと同じだよ…」
「俺もだぜ…」
永倉、藤堂、原田が悔しそうにしている
「今回は私も同じですから…」
総司も複雑な顔をする、皆思いは同じらしい‥
「一番近くに居た総司が辛いよね…」
藤堂は総司に向かって、すまなそうに言う。
「・・・
なった側はどうなんだろうな…」
何を思ったのか、急に斎藤が不思議な事を言い出した‥
「斎藤さん??」
「もし橘の立場だったらどう思う?」
斉藤の言葉に、四人共暫く考え込む…
「それで…
良かったと思うんじゃないかな??」
始めに声を出したのは藤堂だ
「あぁ、俺でもそうするな…
誰かやられるより、自分がやられた方がよっぽど良い」
同じく永倉も同意する
「・・・・・・・・・」
総司はそんな永倉達を見て、あぁそうかと思う
先程の山崎といい、斎藤といい言っている意味は皆同じ…
相手を犠牲にするくらいなら、自分が大怪我しても前線に立つ…
多分瑠衣もそう…
今更ながら気づいた…
自分も同じ事をしていたと思うから…
「そういう事だ…」
言葉は少ないが、何時も的確な意見の斎藤…
叶わない‥総司はそう思った。
瑠衣が目を覚ますまで、総司の巡察はお預けである
幾らなんでも危険、それが一番の理由…
夜、総司は全てを済ませて部屋に戻って来た。
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