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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第14章 "黒"
相変わらず瑠衣の意識は無く、昏々と眠り続けている。
総司は自分の分の布団を引き、寝間着に着替える…
巡察に出て無いので、巡察報告等の書類整理も無い。
「ふぅーー」
一息入れ、瑠衣の様子を伺う…
熱は大分下がったようで、呼吸も穏やかになっている
心配していた傷の化膿も無く、順調に回復の方向に向かっている様だ。
「早く目を覚まして下さい…」
これで意識さえ戻れば何の心配も無くなる(傷の心配は残っているが)
自分の布団に転がり、両手を頭の下に入れ、そして天井を眺める…
何も考えず、ただ少し薄汚れた天井を眺めてる…。
「・・・・・・・・・」
そんな時…
"ふわっ…"
何かが総司の頬に触れた…
「!!?!!?」
慌て触れられた頬の方を見ると、瑠衣が手を伸ばし自分の頬に触れているのが見えた。
「た…橘さん!!」
総司の目がこれでもかというくらいに大きく見開く…
「いたた…
沖田先生何ボーっとしてたんですか?」
総司は瑠衣の奥、左側に寝ていた為、使えない左肩を庇って半身起こし気味で、右腕をこれでもかというくらい腕を伸ばしていて…
かなり無理な体勢で総司の頬に触れたのだ。
「良かった、目が覚めたのですね……
って、何ですかその体勢は!?」
瑠衣の無事な右腕を掴んで、キチンと布団に寝かす。
「ぁはは…
左使えなかったんでつい…」
「ついじゃありません!!
先程まで昏睡していた人がやる事ですか!?」
目が覚めたと思ったらこれだ…瑠衣らしいと言えばそれまでだが、自分の心の臓が保たない…
「もう大丈夫ですよ…」
不思議な‥確信めいた言葉を発する瑠衣…
「大丈夫って…
橘さん、私の心の臓止める気ですか…?」
「はいっ!?
自分そんなつもりはありませんよ??」
「分かってます、物の例えですっ!!」
瑠衣の脳天気さに、つい総司の声が大きくなる…
「はぁ…??
兎に角目も覚めましたし、後は肩ですねー」
瑠衣は試しに、少しだけ左肩を動かして見る…
「いてて…
やっぱりまだ無理かぁー」
「当たり前です、一日二日で治る訳ないですよ」
「まぁ…
そうですけど…」
「…本当に…
心配したのですからね…」
「はい、ご迷惑お掛けしてすみません」
「迷惑とは思ってませんよ…」
総司は優しく瑠衣の頬に触れる…。