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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第15章 "白"
「・・・逃がした・・・」
仕方なく刀を納め、屋根の上から飛び降りる。
「「橘(さん)」」
総司と斎藤が瑠衣に向かって来た・・・
「すみません逃がしてしまいました…」
瑠衣はすまなそうに首を竦める…
「いえ…
私なんか気配も感じませんでした…」
「俺もだ…」
瑠衣の力量は自分を遥かに凌駕する…
そう斎藤は痛い程実感していた。
「次……
行きましょうか…」
総司がそう言い先を促す、何時までも拘っていても仕方が無い…
「…そうですね」
「あぁ‥
そうだな…」
そうして三人は次の"鬼"に向かって歩き出した。
その後七~八件当たりがあり、そこで夜明け近くなっていた。
「今日は此処までですかね…」
「…あぁ」
総司と斎藤は明けて来た空を見る
「…」
瑠衣は何か考え事をしてるのか、あの忍の一件から口数が少ない…
「橘さん…」
総司の言葉に気付いて、振り向く瑠衣‥
「何でしょうか沖田先生?」
その表情も何時もより無表情だ…
「あまり考え無い事です」
「…分かっています…」
久々に総司と斉藤に向かって、無理に笑顔を作る…
「橘、あれは俺達でも、どうしようも無かった」
「…はい」
瑠衣の考えは違う方に向いてるのだが、二人には分からない。
「まぁ‥成果はまずまずですし、屯所に戻りましょうか」
「そうだな」
「はい…」
三人は今日は終わりと、屯所に向けて歩き出した・・・
屯所に戻り三人は解散となる(土方への報告は昼間‥)
瑠衣は総司に風呂と言い残し、自室を後にした…
脱衣所の中で懐から、手の平くらいの紙を一枚取り出した‥
そして自分の髪を一本抜いて、紙と一緒に折り鶴を作る。
「"カタシロよ我の思い思うが儘に飛べ‥"」
すると折り鶴は本物の鳥の姿になり、脱衣所の窓の隙間から飛んで行った…
そう、これが当代様との連絡方法…
"型代の術式"である。
己の一部(大概は髪)を紙に織り込み術を掛ける、すると紙は生きてるかの如く自由に動く
今は鳥の型にし、当代様に伝言を送った…
多分一番有名なのは人型代、つまり人に変化させ、さも本人のように行動させる…
昔から陰陽道が使う術式である。
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