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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第15章 "白"
「あれ?
早いですね…」
自室に戻ると、総司が布団に転がって居た。
「はぁ…
途中で斎藤さんが来ちゃいましたんで…」
「…なる程…」
斎藤が風呂に来たのなら、おちおち入っている訳にはいかない、斎藤は瑠衣が女子だとは知らないから‥
「もう少しゆっくり入りたかったんですけど…」
濡れた手拭いを掛け、部屋の隅で寝間着に着替える、勿論総司は後を向いているが…
「まぁー
仕方が無いですねぇ」
「全くです・・・」
「おや?
珍しく怒っていません??」
着替え終わったのに気づいて、総司は瑠衣の方へ向き直った。
「別に怒っていません」
考えを中断されたので、ちょっと苛ついたのは本当だが…
「本当ですか?」
「本当です…」
総司は瑠衣の顔を見て、これ以上言っても無駄と判断した…
瑠衣は羽織を掴んで入口に向かう…
「少し風に当たって来ます」
そう言って、さっさと部屋を出て行ってしまった。
「やっぱり怒っていますねぇー」
‥と一人呑気な事を考える総司だった…
瑠衣は羽織をかけ、屋根の上に登る…
適当な場所に座り時を待つ事に……
(そろそろだとは思うんだが…)
瑠衣は先程の使いの型代の返事を待っていた…。
夜も明けるというのに、珍しく土方はまだ仕事をしている…
夢中でやってたらしく、そろそろ日が完全に上がりそうな雰囲気…
「最近仕事のし過ぎか…??」
そんな事を愚痴りながら、何となく窓から外を見る…
「…ん?」
屋根の上に人影…
良く見ると瑠衣である。
(風邪引くぞあの馬鹿…)
寝間着に羽織一枚という軽装で、ボーっとしていると言ってもいい…
だがそこに人影がもう一つ現れた。
「!!!!!」
忍らしい姿の男のようだが…
土方は注意深く屋根の上を眺めていた。
屋根の上でボーっと空を眺めていると、突然横に気配を感じた
そこには忍が一人…
「橘様、主上から連絡役を仰せつかった焔(えん)と申します」
焔と名乗った男は頭巾を外し顔を晒す…
黒髪を自分と同じように上で一括りで結い、薄い茶の瞳をしている。
一族にしては珍しい普通の人間の感じを受ける…
だが、主上と口にした所を見ると、当代様の信用が随分厚いようだ。
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