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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第15章 "白"
その片目には、総司の脇差しが突き刺さっている…
いつの間にか瑠衣の髪を結っていた髪紐が解け風に靡く…
「先に忍、お前からじゃ…」
瑠衣は忍=星羅に向かって短距離間の転移をする…
一瞬で星羅の足元に現れる瑠衣…
「くっ…」
星羅は何とか円月輪を構えるが‥
「ほぅ…
まだそのような力が残っておったか…
だが我にはその様な武器など通用せぬぞ…」
朱桜刀を振り上げ、何の躊躇いも無く一気に振り下ろした…
「がはっ…」
心の蔵を一突き、星羅は一瞬で息絶えている…
脇差しを引き抜き、血を払い鞘に戻す……
そして星羅の頭に自分の手を置いた…
「そなたの中、見せてもらおうぞ…」
死んだ人間からでも心読みは出来る…だが…
『バチッ…』
何かが切れた音と共に、星羅の耳から血が流れ出る…
「制約の術式が掛けてあったのか、忌々しい…」
心読みをする前に記憶を破壊された‥破壊するようになっていた
始めから契約とでも称し、制約の術式が掛けられて有ったのだろう。
瑠衣はもう星羅には用は無いと、無表情に縛してある"鬼"の元へと転移する…
「そなたはただでは殺さぬ、せいぜい苦しみながら逝くがよい…」
瑠衣の刀、朱桜刀が瑠璃との契約の時に付けた血で輝き、刀身に文字が浮かび上る…
それに合わせて瑠衣の髪も、黒から銀へと変わってゆく……
長い銀色の髪、赤い瞳…
それを持つのは、この世で唯一‥一人…
「まずはそなたの名を貰おうぞ…」
瑠衣…
いや、既に意識すらも朱雀に戻ってしまっている…
頭に手を翳し"鬼"の記憶を探り出す…
「ほぅ…
緑糸(りょくし)か…
緑糸よ己身を己が草で縛るのじゃ…」
それは命…
その物体の根本である真名を取り、自由に他人を操る能力、緑糸は自分自身を己が草で縛る…
それをさも満足そうに見る朱雀…
「そうじゃ…
もっと強く強く…
肉も骨も千切れるようにじゃ…」
草を操る能力の緑糸の体に、草が食い込み体中から真っ黒な血が吹き出して来る…
「まだじゃ…
もっと‥もっと…」
朱雀の瞳が怪しく輝きを増す…
今の朱雀は力の残量なんか構っていない…
自身にこれだけの怒りの感情があるのを、初めて思い知った…
緑糸の血が地面へと伝い、辺りに血の海が出来ている
朱雀はそれでも全く容赦はしない……
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