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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第16章 "真"

「これが本来の姿です
似てるでしょう、あの方と…」
朱雀様…
姿は違えど髪の色と瞳の色…
まるっきり同じで…
「・・・・・
朱雀様……」
我知らず総司はそう漏らしてしまう……
「そう…我…
いや私は朱雀…
正確には今存在している一代後の朱雀…」
瑠衣の言葉に総司の目が点になる…
「朱雀の裏の力に"過去見"と言うのがある、私はその上をいく"時渡り"が出来る…
つまり私は過去を自由に行き来する事が出来る」
「では、あなたは先の時代の朱雀という事ですか?」
「はい…」
何時もより、かなり高い澄んだ声で、総司の言葉にしっかりと頷ずいた…
「正確には言えませんが、かなり先の朱雀です…
人間は私の姿や力を見ると恐れ、敬うしかしない…」
その赤い瞳は深い悲しみを湛えている…
深紅の瞳は総司を真っ直ぐ見つめ、その内なる感情を読もうとしているよう
「…そうでしょうか?」
「えっ?」
瑠衣の瞳が僅かに揺らぐ…
「私はそうは思いません…
今まで見て来た橘…
いや瑠衣が偽りだとは思えない…
確かに朱雀の力は凄いですけど、中身まで変わるとは思えないのです…」
そう言って総司は辛そうに立っている瑠衣を抱き締めた……
「!!!!!」
総司の行動に驚く瑠衣、この姿でこの様にされたのは初めてである。
「どのような姿でも私にとっては瑠衣は瑠衣…
あなたに変わりはありません…」
瑠衣を抱きながら言う総司。
「…総司……」
赤い瞳が泣きそうに揺らいでいる、そんな事を言う人間が居たなんて…
それが総司だったなんて…
華因の言葉に偽りは無かった。
総司の肩に己が顔をそっと付ける…
「すみません…
この姿だと、涙は‥出ないんです…」
神である朱雀は泣くという言葉が無いし、涙という物も無い
だが、悲しいという感情はある…
「分かりますよ…
瞳が‥心が‥泣いてる事…」
瑠衣も総司をギュッと抱き締め返す
「良いんですか私で…
ずっと一緒に居られる保証もなければ、総司が歳をとっても私は変わらない…
そんな…そんな……」
神と人間では過ごす時が違う長さが違う、更に総司は過去の人間‥それなのに……
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