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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第17章 "試"
瑠衣は女を誘導して路地裏から大通りに出た。
「首…
少し斬られて仕舞いましたね…」
懐から自分の手拭い出して差し出すと…
「…おおきに…」
女は瑠衣から手拭いを受け取り、軽く首に当てた。
「家は何処ですか?
お送りします」
「いえ…
直ぐ近くですさかい大丈夫どす…」
「ですけど…」
「ほんま助けてくれておおきにな…
ではうちはこれで…」
そう言い瑠衣に一礼して、女は人々が頻繁に行き交う街中へと消えて行った…
「…??
変なの……」
不思議な違和感を覚えながらも、瑠衣は何事も無かったように総司達の方へ戻り始める…
それから切り捨てた浪士共の後始末を手伝い、後は大した事件も無く屯所に戻った・・・
流石にこの時間に風呂は使えないので、致し方なく井戸で血を流す。
「ふうー
冷たい……」
季節はそろそろ冬に入ろうとしている、井戸の水は冷たく流石の瑠衣でも多少は堪える。
「だけど変な人だったなぁ…」
普通の女なら錯乱したり気を失ってもおかしくはない状況だった
なのに気丈にも自分の言葉を断って一人で帰って行ってしまった…
「京の女子って…」
不思議な‥こう後ろ髪を引かれる感じがする…
瑠衣のこの勘は、後々当たる事になるのだが……
その後何事も無かったように夕餉を済まし、夜番の山崎と斎藤を見送り、フラフラと自室に戻って来た。
(そう言えば脇差し‥使ったっな…)
夜の自由時間に、総司の脇差しの手入れを始める…
朱桜刀と違い脇差しは普通の物、手入れをしなければ切れ味は落ち錆びてしまう
瑠衣は無心に脇差しの手入れをする…
すると其処に総司も夕餉から戻って来た。
「珍しいですね瑠衣が刀の手入れなど…」
「総司、脇差しは普通の刀ですからね、使用したら手入れは必要でしょう?」
「まぁ‥確かにそうですね」
総司も自分の愛刀菊一文字を手に手入れを始める…
「どれだけ手入れをしているかで、相手の力量が見えてしまう時がありますからね」
「そうですね…」
一番刀の手入れが上手いのは斎藤だと思う…
何時も刃に曇り一つ無く、刀身は青白く輝いている。
「よしっ!」
瑠衣は脇差しを見つめ、納得した上で鞘に収めた…
「早いですねぇー」
「総司が戻る前から手入れしてましたから」
「まぁー
それもそうですよね」
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