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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第17章 "試"
「へ…平助…
気持ちは分かりますが…」
「聞いーたぜ平助!」
「お前も女に興味持つ様になったか」
割り込んで来たのは、やはりと言うか仲良しというかの原田と永倉である。
「平助抜け駆けなんて酷いぜ!!
俺達も月詠に会いたいって言うのによっ」
「全くだ、平助では相手にならん」
次々と追い討ちをかける二人…
「そ…そんなの…
やって見ないと分からないだろっ!!」
藤堂は二人に大反論!
(はぁー
何だか話が変な方向に…ー)
三人に見付からないように、瑠衣は密かに溜め息を漏らす。
藤堂と月詠がまだ何の関係も持っていないのは、自分が一番良く分かっている。
見知ってる者の力が流れ込んで来たら直ぐに気づく筈だから…
その間も二人の藤堂へのからかいは続く…。
助け舟を出そうかとも思ったが、この三人は呆れる程に仲が良い。
瑠衣は落とした湯のみをそっと拾い(幸い割れてはいない)気づかれないようにその場を後にした・・・
「源さん‥」
縁側から抜け出し、炊事場に居る井上に声を掛けた。
「おぅ、どうしたね?」
「すみません、湯のみ落としてしまって…
割れてはいないんですが、皹くらい入っているかもしれません」
瑠衣は井上に素直に湯のみを落とした事を謝る。
「なに、左之辺りに持たせれば良い、あいつなら割れても気にせんからの」
何の心配も無いとケラケラと笑って、井上は瑠衣から湯のみを受け取った。
「あれ?
今日は島田さんは?」
「ん?
仕事が入って今はおらん」
「仕事ですか…」
監察方の仕事だろう…
最近忙しいのか?
「とりあえず湯のみは無事だし、安心せい」
「はい」
「うんうん、時に昼餉はいるのか?」
「あっはい、自分今日は外出予定はありませんから」
「ならば用意しとくぞ」
「お願いします」
昼餉を頼み、一安心と炊事場から外へと出た…
屯所の中をフラフラと歩く…
道場の中からは予想通り、平隊士の悲痛な雄叫びが聞こえる……
そんな時一羽の鳥が瑠衣の肩に止まった。
「・・・・・・・」
鳥は型代である、当代様からの伝言だろう。
「・・・・・」
鳥からの伝言を聴く…
鳥は役目が終わったとばかりに肩から飛び立ち、空中で霧散した。
(焔が来るか…)
中庭からそのまま踵を返し、自室へと向かう…
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