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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第17章 "試"
神社らしき建物の部屋の中ー
「主…」
女の忍らしき者が主と呼ばれる男に話掛ける。
「何用か…」
「沖田総司並びに橘瑠衣に接触致しました」
「ほう、それで?」
「確かに剣の腕は立ちますが、別段特殊な物は感じませんでした」
「意外だな…」
「主、橘瑠衣の方を罠に掛けてみとう御座います…
勿論私自身は表には出ません、その辺の浪士共で十分でしょう」
「・・・・・やってみよ」
「ありがとう御座います主…」
女の忍は一礼して、その場を去った・・・・・
夕方の巡察も終え瑠衣は自室に居た。
壁に向かって座り、その手には昼間焔が持って来た水晶がある・・・
瑠衣はその水晶をじっと見つめていた…
「瑠衣…」
総司もその水晶がどんな物か知っている為、瑠衣に言葉を掛け難い。
「総司…
どうすれば良いんでしょうね…」
多分この水晶には他の水晶と違う術式、術装飾がされている…
一々術を解いてみようとも思わず、身に付けるかどうかも迷っている。
「瑠衣の大切な物なのでしょう??
ならば私は身に付けた方が良いと思いますが…」
「そうですね…
大切な物なのは確かです」
瑠璃の欠片、自分の後悔の証…
瑠衣はそっと水晶の耳飾りを掴み、自分の耳に突き刺した。
「瑠衣!?」
総司は突然の瑠衣の行動に驚く!
瑠衣は後ろの止め鉦をしっかり止め手を離す…
耳に黄色い水晶が揺れている…
「総司、耳飾りとはこうして使用する物ですよ?」
「耳に穴を開けるのですか?」
「はい、普通は耳を冷やしてから開けるものなんですけどね」
そう言ってクスクス笑う…
その振動で耳から少量の血が水晶に落ちる・・・
「あぁ、何か拭くものが要りますね」
耳の血に気づいて総司は何か無いか探すのだが…
「必要ないですよ」
瑠衣が耳を触ると、血は跡形も無く消えていた。
「本当に力って便利ですねぇー」
「はぁ…
だから普段はこんな事には使いません…」
前にも言った言葉をもう一度繰り返して言う。
「だって本当の事ですし…」
「…はぁ…」
耳を水晶を触り、見た目には分からないように消してしまう。
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