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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第18章 "陣"
躊躇いは、この間の‥瑠璃の事件のような二の舞を生む…
もう後悔をしたくない瑠衣は、一瞬で"鬼"を葬った…。
乳白色の水晶が、ゆっくりと井戸の中に落ちてゆく……
「井戸の中か…?」
まだ安心は出来ない、朱桜刀を片手に井戸に近づき中を見る。
「・・・・・当たりだな…」
井戸の底には、禍々しい気を放つ黒く光る石が一つ、落ちた水晶の側に置いてある。
もう罠は無いようだ。
「黒い石???」
思い切って井戸の中に飛び込む。
『ストン‥』
軽く着地し(と言っても2㍍以上の深さがあると思うが‥)辺りを見回す。
石と水晶以外は、至って普通の枯れ井戸である。
「案外こんなものだな…」
結界に罠、二重に仕掛けていれば普通なら解かれる事は、可能性としては限りなく低い。
自分か当代様、それか…
一族でも高位の者…
解けるとしたら、そんな所だろう。
「しかし…
黒い術石なんて初めて見た・・・」
自分が使用している術石は赤、朱雀特有の色に当たる。
青龍・玄武・白虎…
それぞれ、青・緑・白と特有の色を持っている。
後、昔平安の世に居た陰陽師は、基本的に透明…稀に色付きもあるが、黒色は見た事も聞いた事も無い。
「嫌な感じの色だな・・」
何をどうしたら、この様な色が出るのか…
あまり良い事では無い事は確かだろう…。
黒い石からは、怨み・悲しみ・苦しみ・無念・などの負の感情が滲み出しているからだ。
「兎に角破壊するか…」
朱桜刀を両手で構え、黒い石に一気に突き刺す!
『パ――――――ン!!』
朱桜刀の力に負け、黒い石は粉々に砕ける、それに伴い負の気も霧散してゆく。
瑠衣は水晶を拾い、一気に井戸の外へと跳躍する、そしてそのまま空を見上げた。
「・・・・・
一つ破壊しただけでは崩れない‥か…」
空の上の結界陣は八つの線の一つが消えているが、依然強力な力を保ち存在し続けている。
忌々しく空を見た後、何事も無かった様に瑠衣はさっさと森を抜けた・・・
街外れから街中に入り、また屋根の上に登り屯所方面の壬生へと向かう。
(後七つ…
中心は何処だ?
それさえ分かれば全ての石の場所が分かる…)
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