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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第19章 "縛"
「気にしないで食べて下さい、自分の奢りですから」
そう言って笑い、自分も渋々ながらも団子に手を伸ばす…
「おおきに、頂きますぇ」
お香も自分が頼んだ団子を食べ始めた。
「橘はんは優しいどすなぁ、女の方がぎょうさん集まりそうや」
「そんな事は無いですよ」
お茶を飲みながら内心複雑な瑠衣である
(女に好かれてもなぁ…)
多少忘れがちだが、自分も女であるのだが・・・
「いや橘はん優しいし、顔も綺麗やし、女が頬って置きまへん」
「その割には声も掛けられた事もありませんけどね‥
あぁ、お香さんに掛けられましたか」
「いややわ橘はん…」
「本当ですよ」
「クスッ、本当に橘はんは変わってますなぁ」
「自分変わってますか?」
不思議そうに首を傾げ、お香を見る瑠衣…
「橘はんがその気になれば女の方が断るなんてあり得へん思う、なのに全然そんな気あらへん」
「はぁ…
自分あまりそっちの方はどうも・・・・・」
少々困り顔の瑠衣に、お香は尚も続ける。
「何かに一生懸命なんどすなぁ…」
「そうかも知れませんね」
曖昧に答え、本音は心の中に隠す…
お香には悪いがそう簡単に話す気はさらさら無い、まあ‥それが普通だと思うのだが……
団子も食べ終わり、のんびりお茶を啜る二人…
「少し長話しし過ぎましたか…お香さん、仕事中では無いんですか?」
「あっ・・・・・」
お香が思い出したかの様に慌て出した‥
「出ましょうか、今度こそ送らせて下さいね」
「・・・・・はい」
二人は立ち上がり、瑠衣は卓にお金を置き、お香を促して店を出た。
「お香さん、店は何処ですか?」
「此方です」
先程出合った方向に歩き出すお香、瑠衣も一緒に着いて行く…
暫く歩くと人気の無い通りに出た。
小間物屋と言うのであれば表通りにあるのが普通、なのにお香はドンドンとその人気の無い通りを進んで行く…
「お香さん、此方で良いんですか?」
するとお香は突然止まり、此方に振り向いた・・・
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