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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第19章 "縛"


一方新撰組屯所ー



「橘が帰って無い??」

土方の部屋…
総司は嫌な予感がし、土方の元に訪れていた。

「えぇ…
夕方には戻ると言っていたのですが…」

「あいつの事だ、また何かに首でも突っ込んでいるんじゃねぇか?」

「大刀も脇差しも置いてですか?」

「持って行って無いのか!?」

二人ともかなりの大声になっているのも気付かない…


「二本共部屋にありました、橘さんが大刀置いて出るなんて今までありませんでしたね」

土方の眉間にシワが寄っている。

「つまり非番で本当に所用で出たという事か…」

「私もそう思いますね、ですがこんな時間まで帰って来ないのは少々おかしいですっ!」

もし夜の捜索なら自分に一言ある筈、しかし瑠衣が屯所を出たのは昼前らしい。


その時、斎藤が二人の大声に気付いて土方の部屋に入って来た。

「斎藤どうした?」

「昼間巡察中に橘に会いました、書物を求めに街に出たそうで、手には書物を包んだ袋を持っていました…
そして自分はもう少し街を見たら屯所に戻る、そう言ってました」

「本当か斎藤?」

「はい、薬学関係の書物一冊と武術関係の書物二冊購入したと…」

「つまり、橘は書物を購入し、街を散策したら屯所に戻るつもりだった」

「俺はそう思いました」

土方の言葉に同意する斎藤…

「…何だかの事に巻き込まれた可能性があるな…」

「…土方さん…」

「あぁ…
橘が居ないと少々困る…
山崎いるか??」

「はいな」

天井裏で話しを聞いていた山崎が、部屋へと降りて来る。


「話は聞いてたな?
斎藤が会った場所を中心に調べて見てくれ」

「分かりました」

そう言い残し、天井裏に戻る山崎…


「斎藤、総司、今日はもう遅い、兎に角部屋に戻って休め」

「では俺はこれで…」

斎藤は報告はしたとばかりに部屋を出て行く。

「総司…」

「分かってます、私も部屋に戻ります」

そう言い、渋々ながらも土方の部屋を出た。



「・・・・・・
総司じゃ無いが嫌な予感がするぜ」

煙草を吹かし、土方の眉間のシワが更に深くなった・・・



総司も自室に戻って来た…
誰も居ない部屋…
壁の隅によし掛かり膝を丸める…。

「…瑠衣…」

近くには瑠衣の大刀と、自分が貸した脇差しが置かれている。

「何処に…
行ったのですか?」
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