この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第5章 "誠"
庭をまわり屋敷に入り廊下を歩き奥向きの一室に辿り着いた
「近藤さん総司です
橘さんを連れてきました」
すると障子の向こうから…
「待っていたよ、入りなさい」
と優しい声が聞こえた。
障子を開ける総司、その向こうには三人の男達が座敷に座っている。
「失礼します」
総司に促されて中に入る瑠衣…
自分は部屋の中央に、総司は障子の側に座った…
前を見ると上座に優しい面立ちの男、そのすぐ下座に眉間にシワを寄せ眼光鋭く此方を見ている男…
その反対側に細面で西洋眼鏡をかけてにっこり笑ってる男…
直ぐに近藤、土方、山南だと分かる。
「良く来てくれた、私が新撰組局長近藤勇だ」
真ん中の近藤は瑠衣に優しく話す
「江戸から参りました、橘瑠衣と申します
この度は我が父の無理を聞き入れて下さり感謝致します」
両手を付き、ひれ伏しながら答える
新撰組に入りたいが為に橘家当主が会津公に無理を言い、たまたまその場に居合わせた朱雀様が同意した…
という筋書きになっている
瑠衣は懐から二通の書状を近藤に差し出した
「拝見仕る」
近藤は二通の書状を手に取り裏を見、確かに会津公と朱雀様の烙印が押してある事を確認し、中を読み始める…
しばらくの沈黙……
"コン"とししおとしの音がやけに大きく響き渡る・・・
近藤が読み終わり、それを土方と山南に回す
「「「・・・・・・・」」」
三人とも此方を凝視しているのだが…
実は書状の内容は自分も知らない‥ので不信感が漂う…
一番始めに口を開いたのは、以外な事に山南だった・・・
「橘君、君は本当に良いのかね」
何の事か分からないが、ここは頷くしかない我が身の辛い所…
「もとより承知の上で御座います」
悪い予感がする・・・
「はんっ、こんな餓鬼に出来るのかよっ!!」
土方は瑠衣の華奢な体格を見、ふんっと眉間に更にシワを寄せる。
「まぁ、二人とも…
朱雀様が押しているのだ何かあるのだろう」
近藤は二人の間で楽観的な言い草である。
「だかな近藤さん、こんな華奢な餓鬼が"鬼"を始末できるのか??」
土方はこれ見よがしに瑠衣を餓鬼餓鬼と見下す…
・