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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第19章 "縛"
手前の縁側に腰を降ろす二人、その間も山崎の手当ては進む…
「総司…
お前は知っていたんだな…」
「・・・・・えぇ…」
総司は悲しそうに降ってくる雪を見ている…
「…何時だったか…
お前が恋の相談を持ちかけたのは橘の事だったのか??」
「・・・・・えぇ…」
「そうか…」
土方もそれ以上なにも言えない…。
普段ならからかう土方もあんな橘を見た後に、からかう気持ちは無い。
「初めて…」
「ん?」
「初めて大切だと思ったのです、誰よりも…
守りたいと…」
「…そうか…」
何時の間にか大人になったもんだ…
土方はそう思う。
土方も上を見上げ降ってくる雪に思いを馳せた…。
なかりの時間、土方と縁側に居たと思う。
「もう良いで…」
やっと障子が開き、山崎が手招きしている…
総司と土方は静かに部屋に入った。
布団には瑠衣が寝かされている。
その両頬には湿布がされてある、多分体中至る所に包帯や湿布さらしなどが巻かれているだろう。
「一応全ての傷の消毒と塗り薬、それと一番酷い背中は縫いこそしなかったが、傷の数がごっつ多いし深い…
さらしを何十にも巻いて固定してるが、暫く痛みはあると思うで…」
山崎の話を聞いて取りあえず安心する二人、致命傷になる程の大きな傷が無かったのは幸いだ。
「ただな…」
「ただ??」
総司は聞き返す。
「ただ、体より心の問題の方が大きい思うねん…
普通なら、とっくに気が触れていてもおかしく無い状況やった
今は眠っているから大人しいけど、目覚めたら何するか分からんで…」
約七日、毎日拷問に男共の欲望の捌け口にされれば、普通とっくに気が触れている。
瑠衣だからこそ、ギリギリ保っていたのだろう…
「暫くは眠る思うで、多分ロクに寝てもいなかったと思うさかい
それと前にも言ったが、傷から来る熱が出る可能性が高い、もしそうなったら、直ぐに知らせてや」
そう言って山崎は立ち上がり部屋を出て行く…
瑠衣の事が最優先だったので、自分達の事は後回しにしてる。
まだ、返り血の付いた着物に後始末…
やる事は一杯残っている。
「ま…
とりあえず今、命に別状無いのが救いか…
総司俺も戻るぜ」
「…はい」
土方も瑠衣の顔を見て取りあえず安心したのか、自室へと戻って行った。