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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第19章 "縛"


「そやから今回も大丈夫やと?」

「えぇ…」

総司は瑠衣の髪を優しく撫でながら話を続ける。

「もう一つ気になる事があるんやが、あの時なんで沖田はんの脇差しだけが鎖を切れたんや?」

「私もはっきりとは分かりませんが…
あの脇差しは何処かに奉られてた御神刀だと聞いています、ですから何だかの形で御神刀の力が鎖に勝ったのかと…」

「…なる程…
それで鎖が切れた‥そう言いたいんやな??」

「えぇ、実際この御神刀を持ってから"鬼"の心の臓が見えるようになりましたし、何かしらの力があるのは確かだと思います」

信じられないような話が次から次へと…
山崎の頭の中は状況を整理しようと一杯一杯だ。

「もう一つ、橘・・・・・
瑠衣の刀も力がある特殊な物らしいのです」

この二人何処まで隠してたんや……
山崎は総司の言葉にもう呆れるしか無い。

考えても答えが出ないものに、時を費やしても無駄な話だ。


「じゃぁ今日はそのままでええわ、眠った方が傷の治りが早い事もあるさかい」

「そうさせて貰います」

にっこりと山崎に総司は微笑む…


(作り笑顔じゃ無くなったな…)


今の総司の表情は自然そのもの、これで心配事も一つ減る…

「ほな、わてはこれで」

「はい」

山崎は薬箱片手に部屋から出て行ってしまう。



総司は山崎が出て行った後も、まだ瑠衣の髪を撫でいる…


(早く元気になって下さいね)


そんな事を思い腕の中の瑠衣を見ていた・・・・・







「副長…」

山崎は屋根裏から土方の部屋に入る…
忍服じゃ無いのだから、堂々と入れば良いのだが、いい加減屋根裏が癖になってしまって此方の方が楽なのが理由。


「どうだ?
橘の様子は?」

何時もの如く土方は書類の山と格闘している…

「どうやら一度目ぇ覚ました見たいです、今はまた眠っていますが…」

「そうか…
暴れたりとかは無かったんだな?」

「その様子はありまへんなぁー」

先程の二人を思い出し、間違いなく無いと確信してしまう。

「傷の方は?」

「一度目ぇ覚めて、また眠ったって事は大丈夫だと思いやす」

「意外に頑丈だな…」

土方は煙管に火を点ける…
部屋の中に恒例の煙りが充満し始めて来た。
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