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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第20章 "追"
総司はまだ迷っていた
裏路地に入るか入らないか…
「全く‥昼間瑠衣に言われた通りになりましたね」
不安が募る…
瑠衣ならば、この裏路地を簡単に抜け出せるだろう…
だが、実際は全く出て来る様子はない…
幾ら何でもおかしい‥そう思う
間違いなく瑠衣に何かあったとしか思えない。
「仕方がありませんね、行きますか…」
総司は意を決して裏路地に入った・・・
真っ暗な細い長い道、脇道が幾つも繋がっている
一体どういう建て方をしたらこんなになるのか…
「どちらに行けば良いのですかね…」
流石の総司も途方にくれる…
さっきから行き止まりに出くわしては、引き返しの連続である。
「私…
方向音痴でした?」
ついそんな事を思ってしまう。
さっきも通った様な道をひたすら歩く…
入り口があるのだから、出口もある、そう信じて……
もう一人、この裏路地を歩いている人物が居た。
この裏路地も覚えばかなりの近道になる…
何時も通りに軽快に勝手知ったる裏路地を歩く。
「ん??」
遠くから声が聞こえる。
「珍しいな誰か居るのか…」
男か?
こんな時間、こんな場所に女が居る訳が無い。
だが…
『あぁぁぁぁぁぁ!!』
微かに聞こえるのは女の様な声‥それも悲鳴に近い、そして何となく聞き覚えがある気がする。
「…行ってみるか…」
そう言い声に向かって歩き出した。
総司も先程とは違う場所に居た。
壁の色が微妙に違う…
それでも行き止まりの繰り返し…
「此処どこなのでしょう?」
そんな事を思いながら歩みを進めているとキラリと光る物が目に付いた。
「んっ?????」
光った場所まで歩く…
其処には一本の刀が落ちている…
「・・・刀…ですか??」
何となくその刀を持ち上げると…
『フワッ…』
「!!!???」
総司はその刀をまじまじと見詰める…
一見普通に見えるが、光の反射で赤くも見える刀身、そしてこの異常な軽さ…
「瑠衣の刀…」
総司の顔に焦りが浮かぶ…
間違っても瑠衣がこの刀を手放す事は無い…
だとすれば、間違いなく何かあったとしか思えない。
「・・・・・」
総司は瑠衣の刀を手に、先を歩き出した。
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