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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第20章 "追"
自分に抱き付いている瑠衣を見て、つい優しく微笑んでしまう。
「総司、おめぇがそんな顔するなんてなぁ…
一生女に縁が無いかと思ってたぜ」
土方は意外そうな顔をして言う…
「……
私もそう思っていたのですけどね…
彼女…瑠衣だけは別です…」
「…そうか…」
総司が人並にそういう感情があった事に、とりあえず安心する。
瑠衣と居る時の総司は自然で、前みたいな作り笑顔をする事も無くなっいる。
何でも自分の心の中に閉じ込めてしまう総司が心配だったのは確かだ。
「似ていたのです…」
「んぁ?」
「前の私に…
己の心を隠して、他人を寄せ付けない…
ある意味私より瑠衣の方が酷かったのですけどね…」
「…」
「瑠衣は感情という物を殆知らなかった…
自分には必要ないとも言いました…
けど私はそんな瑠衣に一つでも感情というものを教えたくなって…」
総司は一旦話を切り…
「知らなければ教えれば良い、そう思ったのです…
だから…
時間を掛けて一つづつ…
嬉しい・楽しい・愛しい…
少しずつ瑠衣に教えていったのですよ」
総司の独白に土方は目を丸くしている…
まさか橘にそんな秘密があったなんて…
確かに来た頃は無表情だが、誰にでもにこやかに対応していた‥そんな奴だった気がする。
だが今は自然に感情を出している…
先ほどのあれを見れば、そんな感じだ。
ある意味総司と似た者同士なのかも知れない…
「今は普通に感情を出していますよね…
それでもまだ分からないと瑠衣は言うのですよ…
曖昧な感情…
そんなのが分からないって……」
「どんな育ち方をしたらそんなになるんだか…」
総司にしがみついている橘を見ながら、土方はつい零してしまう。
「さぁ……
はっきりとした事は教えて貰えませんでしたが…
瑠衣の周りが求めたのは感情のある女性では無く、無感情に動く人形だったと…
ただ子供の頃には感情はあったとは言っていましたね」
「人形…」
あまりの事に言葉が出ない…
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